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平成17年11月5日

{公図}と個人土地資産の侵害

斎田朋雄
    

{公図} は地方自冶体が土地管理の為に作製する土地台帳である。個人の所有する屋敷田畑山林と国や地方自冶体が公有する道路施設、其の他の敷地 国有林 其の他、総ての土地の所有権と、租税の計数の基礎となる土地図面である。基本的に管理する国や行政と、所有する地主の両者立会い確認によって確定する。戦前期までは大蔵省と法務局が管理主体であったが、戦後昭和25年に地方自冶体が {公図} 作製に加わった。

さらに昭和35年に法的改訂が行われ土地管理と {公図}の作製が地方自冶体に委託される事になった。同時にそれ以前の土地台帳 {公図} は一旦破棄されて、新しく地方自冶体によって作られた {公図}に切り替えられた。地方自冶体はこの時点で。土地管理と {公図} 作製の権限を与えられて、{公図}は何時何所でも地方自冶体によって作製できるようになったのである。

地方自冶体が作製する {公図} は優先性をもつことになる。公図 制度が改訂されて五十年余りが経過して、{公図} が個人の土地資産を侵害している事実が判明した。実例として群馬県勢多郡赤城村の農民Aはかねて法務局に不動産所有登記してあった屋敷敷地と、赤城村が作製した公図を対比した処自家屋敷地面が半分、二分の一が他人の名義に線引き、侵害されていたのである。

Aの所有する他の田畑山林も、同じような公図による侵害が判明した。Aは赤城村役場に不動産所有登記書の、通りに {公図} の訂正を求めたが村役場は、現在の公図の方が優先する と拒否された。其れで村長助役村会議員農業委員地元選出の県会議員、国会議員まで接触して 公図の改訂を求めたが、悉く 公図が優先する、と 拒否されるばかりでなく、私欲で騒動を起こすと、村八部的な激しいバッシングを家族ぐるみで被ったのである。

どうして公図によって個人の土地資産が侵害されたか は、次の構造的理由による昭和三十五年以来、日本は高度経済成長期を迎える。高速道路 新幹線 農地構造改革、リゾート法バブル期の土地価額の暴騰と土地の売買移動が激しく行はれた。土地は登記の対象になった。地方自冶体の役職や政治関係者と不動産業者が利権を目的に {公図} の改竄に介入したのである。

道路改修や下水道工事と、{公図}の書換えの機会はしばしば合ったのである。特にAの住む赤城村は、関越道路、鉄道複線、リゾート法による土地売買が激しく行われて来たのである。

公図 の改定書換えには、行政と所有者個人の立会い確認のうえで行うのが原則なのに、個人地主の立会いの無いままに {公図} の改定が行われていた。赤城村Aの如き {公図} による個人土地資産の侵害を被っている実例は全国に無数あるのである。明らかに弱者である。憲法に言う基本的人権の無視である. {公図} のもつ政治的機能を、みなおす必要がある。
其の絶対的優先性は制約させる必要がある。