この夏(1999年7月)日向野克巳氏はインド・ヒマラヤ、ヒマチャルプラディシュ州マナリから、ダショハール湖を巡りました。氏から写真や紀行を寄せていただく予定ですが、最新の記録として当座、氏が群馬県山岳連盟発行「山岳ぐんま」第66号から転載します。なお、日向野克巳氏は現在群馬県山岳連盟指導委員会副委員長です。氏からはすばらしい写真を提供していただきました。
初めての人のための海外トレツキングの試み
インドヒマラヤを歩く
指導委員会副委員長 日向野 克己
1.ヒマラヤへの憧憬
岳連の登山教室の例を挙げるまでもなく、近年、中高年を中心にした人たちの登山は、実に活況を呈している。
そうした状況の中で、国内の山から海外の山、特にヒマラヤの姿を一目でもいいから見てみたいという憧憬に似た意識が芽生えてくるのは、至極当然の成り行きだともいえる。
山の経験も乏しい若い女性のタレントを使い、ネパールのヒマラヤ観賞トレッキングを行い、その様を逐次テレビ画面に納めたシリーズが放映されるなど、その一例である。
現に、ヒマラヤの幻の花「ブルーポピー」を実際に自分の目で確かめたいと
言って来る人もいる。今は、トレッキングツアーと称して普通の海外旅行並にセットされたツアーに入れば、簡単にヒマラヤの姿を眺めることは可能である。
しかしながら、そうは言っても、実際にはなかなか難しい条件があるのがヒマラヤトレッキングである。日数の問題、高度障害の問題、時期の問題、その国の風土への適合の問題、体の状況の問題、どの様な形で実施するかの問題、費用の問題など。あげてみれば、結構クリヤーしなければならない障碍は多いのである。
2.トレッキングの実際
こうした様々な要件を考えつつ、これなら比較的全体の条件を満たしうるのではないかという実例を挙げてみたい。
昨年(1998)、今年(1999)と二年続けてインドヒマラヤを歩く機会があった。昨年はインド・ヒマチヤルプラデイシユ州の北東部、ハムタ峠(4270)越えのトレッキングで、山中五泊六日の山旅であった。これは一日の行動時間が長く、特に、ハムタ峠への登りは、氷河の上を詰めていくというもので、これはかなりの精力を使った。幸い天候には恵まれたが、全体的に厳しい部類のトレッキングと言える。全くの初心者向きとは言い難いものである。
さて、今年の例であるが、これを初心者(少し頑張ってもらって)にも可能と思われる例として参考に供しようというものである。
3.インドヒマラヤ(マナリ・マリ・ダショハール湖トレッキング)
◎第一日 (7/17)
正午、成田空港より、エアインデアでバンコク経由デリー空港へ。約十一時間。デリー泊。
◎第二日(7/18)
到着の夜が遅いこともあって、この日は終日休養も兼ねてデリー市内見学。
◎第三日 (7/19)
国内航空(インデアン・エアライン/双発プロペラ機19人乗り)で、クルのバンタールヘ飛ぶ。これを陸路にすると、約一日かかってしまう。飛行機の場合は、シムラ経由でも二時間半。午後一時にはクル・バンタールヘ到着。
ここからマナリまではジープ。午後三時にマナリ到着。◎第四日(7/20)
出発の予定だったが、朝から雨。一日様子を見ることにする。近くのブータンの寺、マナリの古い寺ヒデインバ見学へ。
午後は地元のエイジェントと、コースなどの打合せをする。◎第五日 (7/21)
朝から雨。しかし、今日は出かけることにする。九時すぎ、車でオールドマナリま
で送ってもらい、そこから歩き始める。
ここはベアス河の右岸で、はるかに高いところに道がつけられている。崖っぷちの危ういようなところを通過してリンゴ園の中を行く。
シュガール、ブルワなどの集落を過ぎ、一時半、べアス河とソーラン谷を分ける地点、パルチャンに到着。
二時四十分、ソーラン谷のキャンプサイト到着。ここは、インドでも数少ないスキー場のあるところ。
◎第六日(7/22)
九時すぎ出発。マリまではべアス河の右岸に渡りその大きな尾根をトラパースして行くのであるが、大雨によって橋が流されたため、やむなくコチを経由する車道のショートカットということになり、トラックなどの排気ガスには悩まされた。
三時、マリに到着。雨はようやく上がる。◎第七日(7/23)
九時すぎ出発。三千五百メートル地点より、お目当ての 「ブルーポピー」が現れ
る。見渡す限りのお花畑。
二時すぎ、ダショハール湖(四千二百三十メートル)到着。少々の頭痛。このあたりで高度障害は出るらしい。六千メートル峰ゲバンゴー峰の勇姿が印象的。
◎第八日(7/24)
九時すぎ出発。マリに向かう。お花畑の中を東にトラパース。 正午すぎ、マリに到着。車のピックアップを待つ。マナリ帰着三時近く。
◎第九日(7/25)
マナリ登山学校でインストラクターとの交流を深める。
◎第十日(7/26)
クルより国内航空でデリーヘ戻る。休養。舞踊鑑賞など。
◎第十一日(7/27)
市内観光の後、午後の便に搭乗。
◎第十二日(7/28)
朝八時すぎ、成田帰着。
☆なお、このトレッキングに関する詳細については、個別に問い合わせて頂ければ幸いである。
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