シリーズ「授業と生徒を語る」
      物理のテストで、沖縄修学旅行の特集
                伊勢崎工業高校 横山仁嗣
 
平成14年度 物理TB 2学期期末試験
共通問題 選択肢の多くは「理科の課題」の君達の感想をもとに作られています
第1問 修学旅行中に1日だけ天候の崩れた(崩れかけた?)日があったと思いますが、それは11月何日のことだったでしょう?
 
 今回の定期試験はこのように始まりました。私の高校では今年度、2学年の物理を3人の先生で分担しています。「共通問題を設け、生徒に刺激を与えてみよう」と話し合ったのが夏休みのこと。表向きはそうなのですが、物理を専門としない私は少しでも問題作成の負担が減ればいいな、と安易に賛成しました。2学期末試験担当になりましたが、この物理分野は私には難解である上に中間試験後の2学年は修学旅行に向け気持ちが高まり、授業に対する興味の希薄化は明らか。それでも頑張らねば!と思うも私の授業は連休や学校行事により潰れることが多く、期末試験前に授業できるのが3時間と判明したのが11月初旬でした。この時既に共通問題とオリジナル問題を作成することはほぼ無理!と潔い私は授業準備の努力よりも、何とか楽できる方はないものかと思い巡らすことにしたのです。
 生徒の一番の関心は沖縄修学旅行でした。授業中にも内職で旅行ノート作りを必死にやっているようです。「だったら、生徒の興味関心に便乗してしまおう」
と考えるのは当然の帰結だとは思いませんか?
 寝耳に水
 他の2先生に相談し、沖縄に関する問題作成のO.K.を得ました。こうなれば策略家である私の独壇場です。早速社会の先生に旅行ノートを1ページ増やすことを認めてもらい、「修学旅行 理科の課題」を準備し、意気揚々と教室に入ったのです。「君達にいいものをあげよう」とプリントを配ると、心得た生徒達は嫌な顔をします。にこやかに読み上げるところがポイントです。
「沖縄修学旅行がまもなくスタート!事前学習を十分しましたか?貴重な沖縄体験です。理科からは君達に観察・体験・調査してもらいたいことを示します。」と切り出し、@気候調査(理科への意識づけ)A地形観察(触れる重要性)B沖縄グッズの調査(構造認識)C沖縄名産物調査(素材の推測)D沖縄の固有種調査E沖縄人の観察(ヒトを意識)の旨を説明し、この中から試験問題を作ること、旅行後のプリントの提出は必須であることを付け加え、意識を高めます。これが旅行前最後の授業でしたが、問題作成を半分生徒に委ねてしまうわけですから、生徒をなだめながら必死で説明しました。生徒は災難!?
因果応報
生徒達が旅行から帰って来ました。課題の提出は良好でした。何しろ提出の有無すら成績に響くのですから彼らも必死だったのでしょう。同じ文面が連なっているのです。少し残念なのですが、きちんと調べ上げている生徒も数多く見受けられました。生徒の潜在能力の高さを思い知らされる一コマです。それにしても生徒達の得た情報を集計するのは一苦労どころでありませんでした。結局試験前に作業が終わらないと観念し、集計できた結果と「予想問題〜傾向と対策〜」プリントを作成し、配布しました。期末試験前日のことです。ここでは試験前特有の生徒との駆け引きがあります。「先生、どんな問題が出るんですか?」に対し、今回ばかりは「すまん、自分でも分からん!」とごまかすしかないのでした。その後冒頭のような試験問題を完成させるのです。
第2問 次の説明文は沖縄のある場所・建物で観察された特徴です。
 @土が赤茶色だった  A砂はサラサラしていた  Bサンゴ礁が広がっていた
 ・・・ J ゴミがほとんどなかった  K 土地の高低差が激しかった
問1 @〜Kの中からあなたの印象に残っているものを選び(数に制限なし)、その特徴が見られた地名(建物名)を答えなさい。
問2 問1で選んだ場所(建物)について@〜K以外の特徴であなたの観察した特徴を説明しなさい。




 
他の2先生とのやりとりも大変で、「ここの模範解答をどうしよう?」「先生の判断でお願いします」という会話もしばしばでした。私は正答を用意しないことが多々あります。覚えるだけの知識より考える能力の方が何倍も重要と思うからです。これは生徒にも我々教師にも通じることだと思います。
 修学旅行に行かなかった者に上記の問題の正答が分かるでしょうか?明らかな誤答は分かるにせよ、大半は調べなければ正誤を判断できないのです。教師3人、生徒の解答の一つ一つに頭を悩ませ採点することになりました。
 この無謀な挑戦を実行できた陰には、多くの理解者が必要だと実感しました。
第6問 最も多く接した沖縄の人の一人としてバスガイドさんが挙げられるでしょう。さて「理科の課題」にあった沖縄の人、どの位意識し観察できたのか、そのバスガイドさんの特徴を答えなさい(ヒント:「比較」が科学の1歩です。)
*編集部より=このユニークな問題を全部知りたい方は研究所までどうぞ。

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