だから共学にしなければ…。         橋本寛文
*昨年末、浦高や浦和第一女子等埼玉を代表する公立別学伝統校16校の保護者が27万名の共学化反対署名を県に提出、また、別学11校の生徒会長も土屋知事に別学維持を直訴した、との記事がマスコミ各紙に掲載された。上毛新聞にはわざわざ女子校生が決議文を知事に手渡す写真まで添えられていた。これに勇気づけられたか、埼玉県教委は共学化を見送る方針だという。これで群馬の共学化は大幅に歪み、遅れるかもしれない。悪夢を見ている思いである。
*先日、学生運動時代の友人に会う機会があり、彼女(東北のある公立名門共学校出身)に女子校の生徒会長が直訴した件について意見を求めた。彼女は「当然ね。エリート意識ね。それに、安売りしたくないのよ」とこともなげに答えた。共学化すると女子高のステータスが下がってしまうことを彼女たちは冷静に計算しているのだという。
*上毛新聞の記事の中で浦女出身の小沢遼子氏は「公立学校は大学を含めすべて共学にすべき」と述べていたが、私の知人は「共学は時代の趨勢だとは思うが、同窓生としては浦女がなくなるのは寂しいですよね」とも語ってくれた。
*十数年も前になるだろうか、私が男子(進学)校にいた頃、こんなことがあった。「先生ン家は共稼ぎですか?」「うん、共働きだよ、どうして?」「家もそうなんだけど…」「で、君は将来共働き派かい?」「ええ、子どもが生まれるまでは働いてもらおうと思っています」…流石、男子エリート校!…?
*以前、高教組前橋支部が地区の公立8校で実施したアンケートでは、共学・別学校とも僅かの差ではあるが現状維持派が多数を占めた。私の勤めていた先の男子校では、1年生は共学賛成派が多数を占めるが、学年が上がるごとに別学派が多くなり、全体として別学賛成が多数を占める結果になっていた。その理由として、「別学には別学の良さがある」「伝統は大切にすべき」「異性が居ない方が気楽」等が挙げられていたが、今回の埼玉にも見られるように、「選択肢の一つとして別学を尊重すべき」との一見合理的な意見もあった。
*ところで、教育改革花盛りの中で、共学県で別学化の動きはあるのだろうか。
*私は埼玉の高校生たちが共学化の遅々として進まないのに業を煮やして一芝居打ったように思えてならない。「男女共同参画社会」が進む中で、あえて自分たちがアルルカンとなって反対運動をすれば、多くの県民は即座に別学の最大の弊害を理解する、そこで驚いた県民は頑迷な県教委のお尻を叩いて全ての高校を共学校にしてしまうというシナリオである。なぜって、エリート女子校生たちが『第二の性』を読んでいないはずはないし、名門男子校生たちが「理性の眠りは怪物を生む」(ゴヤ)危険を教わっていないはずはないからである。

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